ウォーゲーム読書:『四十七人の刺客』

2022年12月23日金曜日

t f B! P L
『討入忠臣蔵』のプレイにあわせ、池宮彰一郎『四十七人の刺客』を再読した。(『ウォーゲーム日本史』第4号のプレイ指針にも、本作がイメージソースだと書いてある。)
30年ぶりくらいだが、結構憶えていた。

前半は、討入に向けた大石内蔵助と色部又四郎(米沢藩江戸家老)の頭脳戦。
内蔵助の策に翻弄され、上杉家中からは批判され、柳沢吉保には平身低頭しなければならない色部。
敵役なんだけど、いま読むと可哀想で泣けてくる。
再度映像化するのであれば、小栗旬か。
(そうすると、内蔵助は大泉洋。)

さて討入。
本作の吉良邸は要塞化されている。
土塀あり、陥穽あり、落下物あり。
さらに、
土塀通路をようやく制した表門突進隊は、水濠に突き当たった。深さ四、五尺、幅二間、凛冽たる寒気に薄氷の張った水が満々とたたえられている。
(中略)
対岸は丈余の木柵が林立し、その柵の隙間から上杉勢が短槍をくり出し、水濠から這い上がろうとする赤穂勢を突きまくる。
『討入忠臣蔵』では長屋の封鎖が重要なのだか、
侍長屋の打通作戦は順調に推移した。中庭の土塀通路の戦闘が赤穂勢の有利に傾くと、本屋敷との連絡を絶たれた侍長屋残留の上杉侍は戦意を失い、(中略)逃亡をはかる者まで出た。
というくだりを読むと、それが腑に落ちる。

面白いのは、赤穂勢が補給の拠点と人員を準備していること。
吉良邸近くの店に替えの武装や食料を確保し、戦闘の合間に支援する。
これが、寒夜に気力を奪われる吉良・上杉に対して大きなアドバンテージになる。

戦闘場面は緻密かつ凄惨だが、余分な感傷がない。
侍長屋の打通が完了する頃、戦闘は休息状態に入った。最も合理的科学的に行われる近代戦においても、銃砲撃戦が長く続くと、何の命令もないのに敵味方とも間遠くなり、示し合わせたように休止してしまう。
のような描写は、作者の戦場体験の表出か。

この勢いで映画も観ようかと思ったのだけど、評判がイマイチでねえ...

『討入忠臣蔵』のマップ。
小説のクライマックスでは、赤穂勢がアッと驚く攻め手を放つのだが、流石にそこまでは再現できない(笑)

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